【小菅努氏】金にも需要期/不需要期はありますか?
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2026年10月21日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、マーケットエッジ代表 小菅努氏にコラム「金にも需要期/不需要期はありますか?」を執筆いただきました。

1976年千葉県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物取引・FX会社の営業部、営業本部を経て、同時テロ事件直後のニューヨークに駐在してコモディティ・金融市場の分析を学びながらアナリスト業務を本格化。帰国後は調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社代表に就任。商社、事業法人、金融機関、個人投資家向けのレポート配信業務、各種レポート/コラム執筆、講演などを行う。
金にも需要期/不需要期はありますか?
執筆日:2026/10/20
・金需要は年後半に増加する傾向あり
商品やサービスの販売には、季節サイクルがみられるものが多くあります。例えば石油の場合は、夏場のドライブシーズンにガソリン、冬の暖房シーズンに暖房油の需要が拡大する傾向にあります。では、金の場合はどうでしょうか。2000~05年の6年間のデータを使って検証してみましょう。
世界の金需要を四半期ごとに比較すると、一般的に年前半の需要が抑制される一方、年後半の需要が拡大する傾向にあります。1~3月期の金需要を100とすると、4~6月期は100、7~9月期は108、10~12月期は109となっています。著しく大きな変化とまでは言えませんが、上期と下期の間には、比較的明確な違いが確認できます。
こうした季節サイクルが発生する要因の一つが、主要消費国のインドに明確な需要期が存在することです。インドの金需要(宝飾+投資)についても四半期ごとの比較を行うと、1~3月期を100とすると、4~6月期は100、7~9月期は142、10~12月期は197となっています。インドの金需要は、年後半に大きく拡大する傾向が見られます。

・年後半にインドが金を購入する理由
では、なぜインドは年後半に金を購入するのでしょうか。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が2023年1月に発表したレポート「Jewellery demand and trade: India gold market series(宝飾需要と取引:インドの金市場)」では、金はインドの文化に深く根付いており、その購入は伝統に由来することが多いと説明しています。個人が思い付きで購入するのではなく、金宝飾品の購入方法・時期に関する意思決定は、家族全員が関わっているとされています。具体的には、インドの金需要は1)婚礼、2)宗教祭典、3)農業収穫の三要因で季節的に動くと整理しています。
婚礼需要は、「streedhan(ストリーダン)」という慣習・概念が関係しています。女性本人の財産・経済的な保障として、実家や親せき、友人などから贈られるものです。単純な宝飾品としてではなく、家族から女性本人への資産移転の手段の一つになっているため、婚礼シーズンに金需要が拡大する傾向があります。11月頃から婚礼シーズンになるため、その前後に金需要は拡大しやすくなります。
宗教祭典需要は、ヒンドゥー教の祭典期間中に金需要が拡大する傾向があることです。ヒンドゥー教で金は富や繁栄の象徴とみなされますが、特にDiwali(ディワリ、10月か11月)とAkshaya Tritiya(アクシャヤ・トリティヤ、4月か5月)に金を購入することは、縁起が良いとされています。
農業収穫需要は、農村部の収穫時期が終わった後に、金需要が拡大する傾向があります。カリフ作物(コメ、トウモロコシ、綿花など)は9~11月ころに収穫され、収穫作業が終わると農家の現金収入が拡大することもあり、金需要が強まります。
これらの婚礼シーズン、ヒンドゥー教の祭典、農業収穫期が特に重なるのが9~12月であり、それが年後半のインド金需要が急増する季節サイクルの背景になります。このため、この時期にインドの金需要が季節サイクルに沿った強さを見せるか否かは、年間の金需要動向を占う上でも重要な指標の一つになります。

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