いしふくコラム

【相場情報】2021年の金相場を振り返る

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2022年01月28日

国際的にドル建てで取引されている金について、日々海外相場を注視し当社の原材料を仕入れている資材購買担当者から見た2021年の相場概況をご案内します。

  • 当社で発表している円建て金価格は、ドル建てで値決めされた金価格を円換算する際に為替相場の影響を強く受けます。ドル建て金価格は値上がりしていても、為替相場が円高に転じて円建て金価格は値下がりするといったケースもあります。
    本稿では主にドル建て金相場の動きをご紹介しますが、あわせて為替相場の動きにもご注目ください。

プラチナについては、こちらの記事でご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。

2021年の最高値・最安値

国内金価格(税込)

最高値:11/18(木)

 小売価格  7,586円/g

 買取価格  7,483円/g

最安値:03/05(金)

 小売価格  6,523円/g

 買取価格  6,413円/g

ロンドン金価格

最高値:01/06(水)

 午前 1,957.20ドル/oz

最安値:03/30(火)

 午後 1,683.95ドル/oz

為替(TTS)

最高値:01/06(水)

 103.68円

最安値:11/25(木)

 116.33円

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ドル建て年内スポット価格の最高値と最安値をつけた第1四半期

年初1,930.80ドルでスタートしたロンドン金相場は英国の3回目のロックダウン、米ジョージア州の上院決選投票を控えた市場のリスク回避姿勢から1月上旬には一時1,957.20ドルまで上昇し、年内スポット価格の最高値となりました。

しかし、この選挙で民主党の候補が勝利し米大統領と上院、下院の全てを民主党が占める結果となると、経済政策への期待感の高まりで米株式市場は堅調に推移し、金相場は下落に転じました。2月半ばに1,800ドルを割り込むと、3月には新型コロナワクチンの普及に伴う経済正常化期待やFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)での景気支援の継続示唆、投資アプリ経由の仮想通貨等の投資ブームが金相場を圧迫。3月末には1,683.95ドルまで下落し、年内スポット価格の最安値となりました。

為替

1月から3月のドル円相場は、103円からスタートし、アメリカの経済政策への期待感の高まりや米長期金利上昇を材料に円の下落が続き、3月には110円台まで下落しました。
金価格は、ドル建てでは1月に年内最高値を記録しましたが、この時期の円相場は2021年の中では円高水準であったため、円建てでは最高値とはなりませんでした。
一方で、3月初めにはドル建て価格の下落と円相場107円台の円高が重なり、3月5日に円建ての年内最安値を記録しました。

インフレ懸念、利上げ観測 交錯する金相場

4月に入り米国の新型コロナウイルス感染者数が増加、新規失業保険申請件数が悪化したことを受け、相場は上昇に転じました。5月には、米4月小売売上高が市場予想を下回り、英国がロックダウン解除を発表したことで、対ユーロでのドル安が加速。米長期金利低下を材料に月末にかけ1,900ドル台まで上昇しました。

しかし、6月のFOMCで、利上げ実施の前倒しが示唆されたことが大きなサプライズとなりドル買いが活発化すると、金価格は1,780ドル近辺まで急落。その後1,800ドル台まで戻すも、8月上旬に発表された7月の米雇用統計の内容が市場の予測を大きく上回ったことで1,720ドル台まで大幅下落を見せました。
その後、中国不動産大手の債務問題などから市場にはリスク回避ムードが漂い、金は買戻しが見られ、1,800ドルを回復する場面も見られましたが、9月のFOMCで11月のテーパリング(量的緩和縮小政策)が強く示唆され、9月下旬には再び1,720ドル台まで下落しました。

為替

4月から9月は、1ドル108円台から112円台のレンジをもみ合う展開となりました。
4月には米長期金利が低下し、1ドル109円まで上昇したものの、6月のFOMCで、利上げ実施の前倒しが示唆されたことで111円近くまで下落しました。
7月には、欧米の金利低下と新型コロナウイルス感染拡大によるリスク回避から、109円台後半まで上昇しました。
しかし、8月にはアメリカでのワクチン接種の進展で景気回復への期待感が広がり、また米長期金利の上昇を受け、円安傾向が続きました。
さらに9月にFOMCで11月のテーパリング(量的緩和縮小政策)が強く示唆され、111円台半ばまで下落しました。

インフレ懸念やオミクロン株出現により下支え

10月に入ると、エネルギー価格高騰によるインフレ懸念からヘッジ手段としての金需要が台頭。10月・11月の消費者物価指数が市場予測よりも大幅な伸びを見せたことも材料となり、11月半ばには1,860ドル台まで再び上伸しました。

以降、パウエルFRB議長の再任が決まり、インフレ対策に注力する方針が示されると、FRBによる早期利上げが改めて意識され、11月下旬には金価格は再び1,800ドルを割り込む展開に。年末にかけてはオミクロン株の感染拡大やインフレヘッジとしての底堅い需要から1,820ドル台まで値を戻し、この年の取引を終了しました。

為替

10月には投資家のリスク選好姿勢が強まったことで、114円台まで下落。さらに11月には、米長期金利上昇を受け、115円台まで下落しました。
円建て金価格は、円安の進行とドル建て金価格の上伸が重なったことで、11月に年内最高値を記録しました。ドル円相場はその後、オミクロン株流行を受けて113円~115円台をもみ合う展開となりました。