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いしふくコラム

【池水雄一氏】プラチナ急騰

  • #プラチナ

2025年07月09日

いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。

今回は、貴金属スペシャリストの池水雄一氏にコラム「プラチナ急騰」を執筆いただきました。

プラチナ急騰

執筆日:2025/07/04

プラチナが急騰

プラチナが5月から突然の急騰となっています。年初からの騰落率はゴールドをはるかに上回り、7月月初現在、ゴールドの上昇率が28%に対して55%にも達しています。貴金属のなかでもダントツですが、すべての金融商品やコモディティを含めてもこの時点で最も上昇しているのがプラチナです。

(年初来の貴金属の騰落率)
(年初来のプラチナ価格の動き)

近年のプラチナとゴールドの関係の動き

プラチナは2015年のフォルクスワーゲンの排気ガス不正事件を境にゴールドとの価格が逆転、もはや10年、ゴールドの後塵を拝して来ました。その値差は広がる一方で、今年4月にゴールドが3500ドルまで上昇した時点でプラチナとの値差は2500ドルまで拡がりました。つまりプラチナはゴールドの3.6分の1までその価値が下がったのです。ただしこの言い方は筆者は正しいとは思いません。より正確な言い方はプラチナの価値が下がったというより、ゴールドの価値が上がったというべきでしょう。実際プラチナの価格は過去10年間のほとんどの期間を800ドルから1100ドルでの間での動きに終始しましたが、同じ間にゴールドは1100ドルから3500ドルまで上昇したのです。ゴールドとプラチナの値差が拡がったのはプラチナが下がったわけではなく、ゴールドが上がったからです。

(ゴールドとプラチナの価格と値差の動き)

こんな動きにもかかわらず、未だに一般の人々の意識にはプラチナの方がゴールドよりも高い、貴重だというイメージが強いのが現実です。クレジットカードも未だにプラチナカードがゴールドカードよりも上位にあります。しかし実際のところは、プラチナがゴールドよりも完全に高かったのは1998年から2015年までの間に限定され、それ以前のプラチナとゴールドはほぼ同じ価値もしくは若干プラチナの方が高いくらいのイメージだったのです。現在の我々の多くにはこの1998年以降2015年までの価格関係がもっとも記憶に残っているということでしょう。だとすれば現在の若い世代にはゴールドの方が圧倒的にプラチナよりも価値があるというイメージがもう当たり前になっていくのでしょう。

プラチナとゴールドの本当の価値

では本当はどちらの方がより価値があるのでしょうか。それを語るのは実はとても難しい問題です。最も端的な答えはやはりその価格であり、執筆時現在はゴールドが3336ドル、それに対してプラチナは1391ドルと、ゴールドの価値はプラチナの2.4倍。ではその生産量からみる物質としての希少価値はどうでしょうか。2024年のプラチナの鉱山生産量は170トン。それに対してゴールドは3661トン。つまり生産量からみる希少価値という観点からはプラチナはゴールドの21.5倍も希少であると言えます。

このように希少価値から考えると圧倒的にプラチナの方が貴重です。ではその実用的価値ではどうでしょうか。プラチナは圧倒的に「産業用メタル」であると言えます。自動車触媒需要とその他の産業用需要を合わせると全需要のほぼ70% になります。それに対してゴールドの産業用需要はその需要に占める割合はわずか7%に過ぎません。ゴールドはほぼそのままの形で持つ需要、つまり「投資用メタル」だということができます。これは貴金属の中でもゴールドだけに見られる特徴であり、プラチナは圧倒的に産業用の材料であり、需要からみるとシルバーはちょうどゴールドとプラチナの中間的な存在であると言えます。そして現在の貴金属の価格を決めている最も強い力は、「産業」よりも「投資」なのです。ゴールドがプラチナよりもはるかに高くなったのは、最も端的に言うと投資家がゴールドを買うからです。投資家は圧倒的にゴールドを買います。中央銀行はゴールドを買いますがプラチナやシルバーは買いません。それが現在プラチナがゴールドよりもこれだけ安く置かれている理由です。

〔図〕

プラチナがゴールドほど投資家に買われない理由

ではなぜプラチナはゴールドほど買われないのでしょうか。筆者が考える最大の理由は、人間との歴史の短さとその希少性の高さです。ゴールドと人間の付き合いは有史以来、それが認められていますが、プラチナがプラチナとして意識されたのはせいぜい270年くらい前のことです。そして希少性の高さがその理由だというのは逆説的ですが、ゴールドやシルバーは少なくとも古代から近代に至るまで貨幣の役割を果たすのに十分な量があったということです。プラチナの量は貨幣とするには少なすぎたと言えるでしょう。そのため投資の対象とも考えられなかったのだと思います。

プラチナの今後

今年前半にプラチナはゴールドの3.5分の1という過去最大の割安さを記録しました。しかし現在ようやくその割安さに目をつけた投資家の買いがプラチナに入ってきて、プラチナが急騰しています。そのきっかけになっているのは、この割安さに注目した中国の買いですが、そもそもゴールドに比べて圧倒的に量が少ないために、ようやくそれが現物の不足として注目されています。プラチナの金利であるリースレートは現在ゴールドの10倍以上という10%をこえて高止まりしています。非常に割安だった分、まだまだプラチナのゴールドへのキャッチアップの動きは続くのではないでしょうか。今でもまだゴールドに比べると非常に割安に置かれています。投資の王道はゴールドですが、同時に割安でプラチナやシルバーにも投資するのが、それらが大きく戻るときにはレバレッジが効いたような効果を期待できます。

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