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いしふくコラム

【池水雄一氏】シルバーの需給2025

  • #資産運用
  • #銀

2025年05月14日

いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。

今回は、貴金属スペシャリストの池水雄一氏にコラム「シルバーの需給2025」を執筆いただきました。

シルバーの需給2025

執筆日:2025/5/05

シルバー供給不足は7年連続

Metals Focus による年間貴金属需給統計の第一弾として「World Silver Survey 2025」が発表されました。Metals Focusが自社の名前で出しているGold FocusとPGM Focusと違い、シルバーだけはWorld Silver SurveyというタイトルでThe Silver Instituteが出していますが、その調査とフォーマットはすべてMetals Focusが調査製作を行っています。毎年Silverが4月、PGMは5月、Goldは6月に発表されており、これが貴金属業界の需給統計の基本になっていると言っていいでしょう。

その第一弾のシルバーの最大の注目点は2024年予想で6年連続となっていた「供給不足」がどうなるか、という点。その結果は予想通り2024年も6545トンという大きな供給不足となり、2025年の予想も5837トンという供給不足が続くというもの。この供給不足の最大の理由は「太陽光需要」です。供給不足になる前の2018年の太陽光需要は2706トンであったものが、2024年実績では6147トンと約2.3倍に伸びています。同期間のシルバー鉱山生産量は、26463トンから25497トンと約1000トンの減少となっています。

「The World Silver Survey 2025」より
(「The World Silver Survey 2025」より)

シルバーの鉱山生産

シルバーの鉱山生産は、その需要が増えたからと言って簡単に増やすことはできません。シルバー鉱山(シルバー生産からの収入が50%を超える鉱山、プライマリーと呼ばれる)のシルバー生産に占める割合は30%に満たず、ほぼ同じ割合で、銅鉱山、鉛亜鉛鉱山、ゴールド鉱山の副産物として生産され、副産物は基本的にコントロールはできないからです。過去十年間のシルバーの鉱山生産をみても26000トン近辺で安定しており、大きく増加や減少はありません。この結果、太陽光発電需要の伸びがそのまま供給不足につながっているという図式になっています。

「The World Silver Survey 2025」より
(「The World Silver Survey 2025」より)

供給不足にもかかわらずゴールドに見劣りする価格上昇率の背景

供給不足は2025年の予測を含めると7年連続となる見込み。それに伴う価格の動き(LBMA価格の年平均)をみてみると供給不足前年の2018年は16.21ドルであったが、2024年の平均価格は28.27ドルに上昇、6年間で70%以上の上昇となりました。シルバーだけをみると十分にこの需給が反映された価格だと思いますが、供給不足でもないゴールドが同時期に80%近く上がっている現実の元ではシルバーの価格上昇は極めて控えめなものとの印象になってしまいます。シルバーがゴールド以上に上昇してもおかしくない、というより、需給だけを考えると本来シルバーの上昇率はゴールドを上回るべきだと言ってもいいでしょう。なぜそうなっていないのでしょうか。

それは豊富なシルバーの地上在庫が関係しています。現在確認できる地上在庫はLoco London Silverのアカウント残、CME、SHFE、SGE、その他の各取引所の在庫残です。これが2024年末で38540トンとなっており、これは二次供給も含めた年間の供給量32000トンを上回る数字です。供給不足分を補うに十分な量であると言えるでしょう。そして価格の上昇により、これまでは表に出ていなかったシルバーがこれらの確認できる地上在庫として出てくる部分もあり、昨年は供給不足にもかかわらず若干ですが地上在庫は増加しています。シルバーがゴールド以上に上昇するためにはこの地上在庫が大きく減少する必要があります。

投資家の買いがゴールドの集中している現在、シルバーのパフォーマンスがゴールドを上回るのはまだまだ時間がかかるかもしれません。金銀比価は現在100対1と歴史的にももっともシルバーが安い状態となっていますが、早急にこれが大きく改善することは難しそうです。それどころかシルバーの割安度合いはさらに進むかもしれません。それは逆に割安であるシルバーを買っておくチャンスと捉えてもいいのではないかと思います。

(金銀比価の動きとシルバー価格)
金銀比価の動きとシルバー価格
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