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いしふくコラム

【池水雄一氏】日本のゴールド

  • #金

2025年06月11日

いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。

今回は、貴金属スペシャリストの池水雄一氏にコラム「日本のゴールド」を執筆いただきました。

日本のゴールド

執筆日:2025/6/10

日本の金鉱山

その昔金の国ジパングと呼ばれた日本。もちろん、これはマルコポーロが行ったこともない日本に関する誤解もしくは妄想によるものですが、昔は日本にはいくつも金山があり実際に生産していました。しかし現在に関して言うと、日本で未だにゴールドを生産している金山は鹿児島県で住友金属鉱山が経営している菱刈鉱山のみとなっています。ほかの金山、メジャーなところでは佐渡金山(新潟県佐渡市1989年閉山、総生産量83トン)、鴻之舞金山(北海道紋別市1973年閉山、73トン)、鯛生金山(大分県日田市 1972年閉山、40トン)、土肥金山(静岡県伊豆市1965年閉山、40トン)などがありましたが、菱刈金山を除くすべての金山は現在では資源枯渇のために閉山となっています。

現在菱刈鉱山のゴールド生産量は年間4トン。数量自体は非常に少ないものですが、鉱石のゴールド含有率が高いことで有名です。世界の金鉱山の鉱石に対するゴールド含有率は1トンあたり3~5グラムと言われていますが、菱刈鉱山では20グラムから40グラムと段違いの高品位鉱山なのです。現在にいたるまで約250トンのゴールドを生産しており、その生産量でも閉山した他の金鉱山よりも圧倒的に大規模であることがわかります。とはいうものの世界的規模から言うと年4トンの生産規模はほぼ無視ができるほどの小さなものです。

2023年、世界一の生産国である中国は378トン、2位はロシアで330トン、3位はオーストラリアで306トンです。住友金属鉱山にとってもそこから生産されるゴールドが目的というよりは、鉱山技術者の学びの場としての観点が強いように思います。ただ「純日本産ゴールド」として、菱刈鉱山からのゴールドだけで地金を作りそれをブランドとして保証するとすれば、特別な価値(プレミアム)を与えることができるかもしれませんね。しかしそれも実際的には難しいと思います。ゴールドを精錬するときはいろんな材料、たとえばスクラップや銅鉱石からのゴールド分などと一緒に精錬するからです。菱刈鉱山からの鉱石だけでゴールドを生産するのはおそらくコスト的にも難しいでしょう。

日本のゴールドの供給は非鉄会社から

では日本で売られている投資用や工業用のゴールド地金やグラニュール(金粒)はほぼすべてが輸入されたものでしょうか?答えはYes and No です。日本でゴールドを製錬しているのは「非鉄金属会社」がメインです。これらの会社は海外から銅や鉛亜鉛の鉱石を主に海外の鉱山会社から購入して輸入し、それを製錬して目的の金属を取り出します。これらの非鉄金属を製錬する過程で、副産物としてゴールドやシルバー、そしてたいていは微量ながらプラチナやパラジウムも含まれており、それを取り出すことで、貴金属を生産しているのです。こういった会社には、住友金属鉱山、三菱マテリアル、三井金属鉱業、DOWAホールディングズ、東邦亜鉛、中外鉱業、JX金属などがあります。

また鉱石から製錬をするのではなく、すでにゴールドとして使われた宝飾品や工業用品を回収し、それからふたたびゴールドを取り出すいわゆる「リサイクラー」と呼ばれる企業も重要なゴールドの生産者であり、松田産業、アサヒメタルファイン、フルヤ金属、アサカ理研などがあります。ただ製錬会社もリサイクルを行っているのでこの二分野の境界線はそれほどはっきりとしているわけではありません。また地金商はこれらの会社からゴールドを購入したり、海外のリファイナリーからゴールドを購入したりし、それを溶かして自分のブランドの地金を作ったりしています。

日本の代表的なゴールドブランド

世界のゴールドブランドの規準として、LBMA(London Bullion Market Association)が認定するGood Delivery Brandという認定制度があります。これは厳しい条件をクリアすることによって、世界中どこでも通用するゴールドのブランドとして認められたブランドです。基本的に貴金属の世界で取引する際にはこのステイタスが必要となり、グッドデリバリーブランドであれば、世界のどこででも受け入れられますが、このステイタスを持っていないノングッドデリバリーのゴールドは基本受け入れられない、もしくはグッドデリバリーに比べて大きなディスカウントでしか買い取ってもらえないといった不利な扱いを受けることになります。

現在このグッドデリバリーステイタスを取得しているゴールドブランド(リファイナリー)は世界に66社あります。日本はその中で地金商、製錬会社そしてリサイクラーで11のブランドがグッドデリバリーステイタスを有しています。石福ブランドも当然その中の一つです。個人投資家がゴールド地金に投資するとすれば、グッドデリバリーブランドをえらぶことはその第一の条件になると言っていいでしょう。

「日本のゴールド・グッドデリバリー・ブランド」リスト ※LBMAのWebサイトへ遷移します

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