【小菅努氏】金はなぜ価値があるのか? ~比重の話~
- #資産運用
2025年03月19日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、マーケットエッジ代表 小菅努氏にコラム「金はなぜ価値があるのか? ~比重の話~」を執筆いただきました。

1976年千葉県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物取引・FX会社の営業部、営業本部を経て、同時テロ事件直後のニューヨークに駐在してコモディティ・金融市場の分析を学びながらアナリスト業務を本格化。帰国後は調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社代表に就任。商社、事業法人、金融機関、個人投資家向けのレポート配信業務、各種レポート/コラム執筆、講演などを行う。
金はなぜ価値があるのか? ~比重の話~
執筆日:2025/03/19
異常に高い金の「比重」
金はその美しさなどから、古代から人類に愛されてきた貴重な金属です。では、なぜ人類は「金に価値がある」と考えるのでしょうか? 経済的には金の価値の源泉として、その「希少性」や「貴重性」がよく指摘されますが、今回は「比重(ひじゅう)」から金の価値を解説します。
「比重」とは、物質の密度を示す指標で、水の比重が1.0になります。同じ体積でも重い物質はこの比重の数値が上がり、例えば砂は2.0、鉄は7.9などとなります。金の比重は鉄よりもはるかに高い19.3となっています。つまり、同じ容量の場合だと、金は鉄の2.5倍、水の19.3倍重いということになります。
異常さが作り出す金の特別感
金の地金やコインを初めて手に取ってみた際に、その重さに驚くことが多いのは、この比重のマジックです。通常、我々は日常生活を営む上で、見た目でそのものの重さをイメージすることができます。500mlの水のペットボトルの重さは、実際に持たなくてもイメージできるでしょう。一方、金はその見た目と実際の重さのバランスが、他の物質と全く異なります。このため、多くの人が1㎏の金地金や1オンスの金貨を初めて手にとってみると、その意外な重さに驚かされる訳です。「実物を触る前の重さのイメージ」と「実物を触った後の重さの感覚」の間に、大きなズレが生じるのです。
これは、人類が「金に価値がある」と考える理由の一つと言われています。人類は珍しいものや異常なもの、特別なものに価値を見出す傾向があります。金の比重の高さは、「金は特別なもの」、「金は普通のものではない」と人類の深層心理に働きかけるのでしょう。だからこそ、金は権力、富、成功、不朽などの象徴として取り扱われてきました。古代エジプトの王墓やアジアの寺院で王族や神々を象徴するものとして多く使用されてきたのです。金は単なる物質以上の存在として認識されてきた一因に、この比重の高さがあると考えられます。
プラチナは金よりもさらに比重が高い
ちなみに、他の貴金属の比重はプラチナが21.4、銀が10.5となっています。実はプラチナは金よりも比重が高いという特性を持っています。銀の比重は鉄(7.8)よりも高いものの、金の半分強に留まっています。近年は、プラチナよりも金の方が高額になっていますが、長期にわたって「プラチナ>金>銀」の価格関係にあった要因の一つとして、こうした比重バランスも影響している可能性がありそうです。クレジットカードも、「プラチナカード」は「ゴールドカード」よりランクが上になることが一般的です。
金地金やコインを持った人だけが経験した不思議な感覚は、なかなか言葉では説明ができないものです。金を購入して実物を手に持ってみることで、初めて金の価値が感覚的に理解できるのかもしれません。

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