【松本英毅氏】53年ぶりの歓喜に包まれたニューヨーク、市場にも大きな変化が
- #貴金属投資の基礎知識
2026年06月24日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、よそうかい代表 松本英毅氏にコラム「53年ぶりの歓喜に包まれたニューヨーク、市場にも大きな変化が」を執筆いただきました。

会員制米国市場情報サイト「よそうかい.com 」を運営。ニューヨークを拠点に活動し、実際のトレードに役立つ情報提供を身上とする。金融から商品市場まで幅広い知識を有しており、一つの銘柄に捉われることなく総合的な判断を下すことができるのが強み。中でも、1バレル=10ドル時代から追い続けてきた原油市場については造詣が深い。トレード経験を活かした切り口の鋭い分析に定評がある。
53年ぶりの歓喜に包まれたニューヨーク、市場にも大きな変化が
執筆日:2026/06/20
6月のニューヨークは、53年ぶりの歓喜につつまれました
6月と言えば、やはり毎年NBAの優勝決定戦が行われるバスケットボールでしょうか。往年のスーパースター、マイケル・ジョーダンは、6月に活躍する選手(決勝戦に出場して、なおかつ優勝するということです)という意味で、「ミスター・ジューン」という称号を与えられていました。そんな6月、ニューヨークはお祭り騒ぎとなりました。地元のニューヨーク・ニックスが1999年以来で決勝戦に進出、そのまま1973年以来53年ぶりの優勝を成し遂げたのです。しかも勝った試合のほとんどが逆転勝ち、ニックスがスロースターターだったこともありますが、体力不足で息切れした相手を、最後の最後で一気に叩き潰すという戦いぶりが、ニューショーカーを更に熱狂させたことは間違いありません。特に2勝1敗で迎えた第4戦、地元ニューヨークで行われた試合は最大で29ポイント、最後の10分を切っても20ポイント以上差をつけられているという劣勢でしたが、そこから一気に追い上げて最後は1点差で勝ち切るという、劇的な勝利となりました。当日は試合前に会場であるマディソンスクエア・ガーデンに行ってみたのですが、何時間も前から厳しい警備が行われ、入り口近辺にはチケットがないと近づくこともできない状況でした。その後はブルックリンに戻って、近くのパブリックビューイング会場でビールを飲みながら観戦していました。遅くなりそうだったので、最後の大逆転劇を見ることなく家に帰ったのですが、会場はさぞかし盛り上がっていたことと思います。
もう一つ、ニューヨークの6月と言えば、ゲイ・プライド・パレードが行われるのですが、残念ながら28日の日曜日なので、今回の執筆スケジュールには間に合いませんでした。来月のコラムでご紹介できればと思います。
米国とイランは、これ以上戦争を継続する理由がありません
さて6月の金相場ですが、ここへきて状況に色々と変化が生じ始めてきたようです。まずは米国とイランが、戦争終結に向けた覚書に同意したことが、何よりも大きな変化でしょう。14項目に及ぶこの覚書、内容を見る限りでは米国側がかなりの譲歩を行ったようですね。核開発になどに関する重要項目を先送りしていることや、イスラエルが内容に不満を持っていることもあり、最終的な合意に至るのかはまだ不透明ですが、大規模な戦闘が再開するような事態とはならないでしょう。米国の攻撃によって国内は極端に疲弊しているイラン、ホルムズ海峡の閉鎖を受けたガソリン価格の高騰などによって国内で批判が高まり、中間選挙を前に危機感を強めているトランプ政権のどちらにも、戦争をこれ以上継続する理由はほとんど残っていないと思います。
金相場は2月末に米国がイランに対する攻撃を開始してしばらくは、情勢緊迫に対する懸念や先行き不透明感の高さを背景とした安全資産としての需要がしっかりと押し上げるという状況が続きましたが、その後は安全資産としての需要よりもインフレの進行やそれに伴い金利の上昇の方が嫌気される格好となり、最近は軟調な展開が続いています。戦争が完全に終結すれば、もちろん安全資産としての需要も一段と後退することになりますが、現時点ではあまり気にする必要はないでしょう。安全資産としての需要はすでに相場の主要な材料ではなくなっており、戦闘の有無が相場を動かすこともないと思われます。それよりも注目すべきは、やはり足元で大きく売りを呼び込む要因となっている、米長期金利の上昇が今後も続くのかでしょう。
FOMCはインフレ動向次第で、ウォーシュ新議長の下でも利上げに転じる
6月17日、18日の両日、ウォーシュ新議長の下で初めての米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれました。前議長のパウエル氏が議長退任後も理事として残るという異例の状況下での会合は、政策金利の据え置きという予想通りの結果となりましたが、その内容は大きく様変わりしています。まず、声明文の内容が削減され、より簡潔で明瞭な形となりました。一方声明と同時に発表された短期経済見通し(SEP)では、景気見通しが前回3月の時点より下方修正される一方、インフレ見通しは大幅に引き上げられるという、FOMCにとって非常に判断の難しい、厳しい経済状況が続いていることを示す内容となっています。更にはドットチャートとよばれる、今後の政策金利見通しに関しては、ウォーシュ議長が見通しを示さないという、これまで異例の事態となっています。議長は声明発表後の会見でこのことについて、現在の経済環境はあまりにも先行き不透明感が強く、短期的に状況がガラリと変化することも十分にあり得るだけに、あえて見通しを示さなかったと説明しています。トランプ大統領から利下げを期待されて指名を受けたウォーシュ議長、大統領による利下げ圧力と足元のインフレ圧力の高まりとの間で板挟みとなっていますが、今回政策金利見通しを示さなかったことは、そうした苦しい状況下での苦肉の決断だったのではないでしょうか。
この先インフレ圧録画一段と高まるのであれば、いくらトランプ大統領からの要請があったとしても、FOMCは利上げを決定せざるを得なくなるでしょう。市場では9月の会合で利上げを打ち出すとの見方が強まってきていますが、今後発表されるインフレ指標の内容次第では、7月の会合で利上げを決断することがあっても不思議ではないと思います。利上げが決定されれば米国の長期金利も一段と上昇する可能性が高く、金相場にとってはやはり大きな売り材料になると考えておいたほうがよさそうです。
足元で金利上昇観測が強まっている状況は、金にとって必ずしも良いものではありませんが、こうした流れは永遠に続くものでもありません。金利が一段と上昇すれば、足元で好調さを維持している景気も、いずれかの時点で失速を始めることになります。景気の減速やそれに伴う需要の減少がインフレ圧力を弱め、ホルムズ海峡の閉鎖解除に伴うエネルギーをはじめとした供給不安の後退がそれを後押しするようになってくれば、FOMCも方針を転換、今度は積極的に利下げを進めるようになってくるでしょう。そうなるまでにはまだかなりの期間を要することになるとは思われますが、流れが変わった際に金相場がどの市場よりも早く反応、上昇に転じるようになる可能性は高いと思われます。そのためには、何よりもエネルギー価格が落ち着きを取り戻すことが重要となります。ここから秋にかけては、原油相場の動向に対して今まで以上により大きな注意を払う必要があるのではないでしょうか。




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