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いしふくコラム

【池水雄一氏】銀の話2

  • #貴金属投資の基礎知識
  • #銀

2026年07月08日

いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。

今回は、貴金属スペシャリストの池水雄一氏にコラム「銀の話2」を執筆いただきました。

銀の話2

執筆日:2026/07/03

銀の話2 - 「中世から現代にいたるシルバー」

前回(1月13日)の「銀の話1」で人類とシルバーの出会いから古代のシルバーの歴史を少し書きました。だいぶ時間が経ちましたが、今回はその続きです。

「モンゴル帝国」

前回までは紀元前の話でしたが、ここからは本格的にシルバーが世界に広がった中世の話からはじめましょう。

13世紀にモンゴル帝国が東西ユーラシア大陸を統一したことにより、欧州と東アジアの二つの経済圏がつながりました。欧州ではシルバーによる高額決済が広がっていましたが、東アジアでは中華王朝の銅銭による少額決済が一般的でした。この二つの経済がモンゴル帝国によりつながることで、シルバーによる貿易決済が飛躍的に伸びることとなったのです。まさにユーラシア銀経済と呼んでいい世界がひろがったのです。モンゴル帝国の貿易システムは、シルバーの価値をさらに上昇させ、東西の文化的交流を促したのです。五代皇帝のフビライ・ハーンはシルバーとの交換を保証した「交鈔」と呼ばれるおそらく史上初の紙幣を発行し、それがモンゴル帝国内での貿易に使われるという金融革命を起こしました。史上初めて「信用」に基づく「紙幣」ができたのです。その背景にあったのがシルバーでした。

しかしこの頃のユーラシアのシルバーの流通量は十分ではなく、経済の拡大にはブレーキがかかることになりました。これがふたたび再開されるのは16世紀に南米でポトシ銀山や日本の石見銀山からのシルバーの供給を待たなければなりませんでした。

「ヨーロッパ」

一方中世ヨーロッパでは、15世紀に南ドイツやボヘミアでの銀山からのシルバーを中心に銀貨が生産されました。特にボヘミアのザンクト・ヨハヒムスタールで採掘されるシルバーを元にヨアヒムス・ターラーという大型銀貨(ターラー貨)がヨーロッパ銀貨の基準となりました。そしてこの「ターラー貨」が現在の「ドル」の語源になったと言われています。

「ヨアヒム・ターラー」

「日本」

7世紀に対馬銀山からシルバーが生産されたのが日本でのシルバー生産の最初だとされています。戦国時代には各地に銀山が開発され、特に16世紀にその最盛期を迎えた石見銀山は当時の世界の3分の1を生産したと言われています。実際16世紀には、日本は東アジアで唯一のゴールド、シルバー、カパー(銅)の生産国であり、中国にも貿易品として大量に輸出されていました。シルバーの生産の大部分が石見銀山でした。この石見銀山からは世界へとシルバーが輸出され、同時期に同じく最盛期を迎えていたペルーやメキシコなどの中南米の銀鉱山からのシルバーと相まって、世界のシルバー量が一挙に増えたのでした。

「中世から現代にいたるシルバー」

16世紀にポトシ銀山や石見銀山から大量のシルバーが供給されたため、欧州でのシルバーの価値が大きく下がりました。ゴールドはそれほど増えなかったことにより金銀比価は急騰し、そもそも1対5であったものが、1対15までゴールドに対するシルバーの価値は下がりました。欧米では長らく1対15が正式な金銀比価とされていました。英国では1717年に著名な科学者であるアイザック・ニュートンが造幣局長であった頃1:15.21という金銀比価を決めていました。(ニュートン比価、と呼ばれています。)

シルバーが増えたもう一つの理由は、アマルガム法や灰吹き法など精練技術がシルバーの増産を促した言う面もあるでしょう。また19世紀後半になると採掘技術の向上に加え、銅の電解精錬の副産物としてゴールドとシルバーが生産されるようになり、特にシルバーの生産量は増大し続け、現在ではゴールドとの価値関係である金銀比価は1対60から1対120というレベルで動いており、昔と比べるとシルバーが大きく割安になっていることがよくわかります。ゴールドとシルバーのその生産量で比較すると1対7程度です。だとすれば、現代はシルバーがとても安く、ゴールドがとても高い時代になっていると言えます。

金銀比価とシルバー価格 – 青:金銀比価(右)、白:ドル建てシルバー価格(左)
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