【小菅努氏】海水中にも金は存在する
- #貴金属投資の基礎知識
- #金
2026年07月15日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、マーケットエッジ代表 小菅努氏にコラム「海水中にも金は存在する」を執筆いただきました。

1976年千葉県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒。商品先物取引・FX会社の営業部、営業本部を経て、同時テロ事件直後のニューヨークに駐在してコモディティ・金融市場の分析を学びながらアナリスト業務を本格化。帰国後は調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社代表に就任。商社、事業法人、金融機関、個人投資家向けのレポート配信業務、各種レポート/コラム執筆、講演などを行う。
海水中にも金は存在する
執筆日:2026/07/14
海水には金が含まれている
海水には金がある。金の大部分は金鉱山で採掘されていますが、海水にも金は溶けています。陸上の岩石に含まれる金は、河川などで運ばれ、砂金として見つかることがありますが、最終的には海にも運ばれています。また、海底の熱水鉱床にも金は含まれているため、海水中の金の供給源の一つと考えられます。
では、なぜ海水から金を取り出す事業は本格化していないのでしょうか。
それは、海水に含まれる金の量があまりに微量なためです。米海洋大気局(NOAA)によると、1990年に発表された海水分析の研究では、海水1億トンに含まれている金はわずか1グラム程度です。海水1トンに含まれる金は、0.00000001グラム(=1億分の1グラム)に過ぎません。金鉱石では1トン当たりで数グラムの金が得られるため、1グラムの金を得るために海水1億トンを処理することは、経済的に合理性がありません。現在の金価格に対して、コストが高過ぎるのです。
海水に金があることは確かですが、現在の技術・価格条件では、それを取り出すことに経済的な意味はありません。そこに多額の資金を投入するのであれば、金鉱山の開発やリサイクル事業を強化することの方が、得られる利益が大きくなります。専門的に表現すると、確かに海水中に金は存在しますが、それは経済的に回収可能な「資源」とは言いにくい状況です。

微量の金を回収する能力を高めることは重要
ただし、海水から金を取り出そうとする試みに意味がないわけではありません。膜や吸着剤などで海水中の金を取り出す研究は行われていますが、将来的には海水の淡水化施設などで、副産品として金を回収できる技術が実現する可能性があります。
また、仮に海水中の金を取り出すことができなくても、地熱発電所や鉱山廃水処理施設、下水処理施設などで微量の金を回収できる技術革新が進めば、これまで放置されていた金が「資源」として大規模回収できる時代が来るかもしれません。例えば、下水処理場の汚泥焼却灰中には、通常の金鉱石をはるかに上回る金含有量が報告されている地域もあり、すでに回収が行われています。より効率的な回収に貢献が期待されます。
将来的に海水から金を取り出すことができる時代がくるのかは分かりませんが、微量の金回収の能力を高めていくことは、未利用資源の回収につながる可能性があります。

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