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いしふくコラム

【池水雄一氏】どうしてプラチナはゴールドより安いのか?

  • #貴金属投資の基礎知識

2025年11月12日

いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。

今回は、貴金属スペシャリストの池水雄一氏にコラム「どうしてプラチナはゴールドより安いのか?」を執筆いただきました。

どうしてプラチナはゴールドより安いのか?

執筆日:2025/11/11

プラチナとゴールドの関係

筆者の世代(60代のおっさん)の人間にはプラチナはゴールドより高価なイメージが強く、現在でもたとえばクレジットカードではゴールドカードよりもプラチナカードの方がステイタスが高いのは、そのような昔のイメージがやはりとても強いということが言えるでしょう。現実は2015年からはプラチナとゴールドの価格は逆転しました。当時はこの価格逆転はごく短期的なものと考えていました。それがもはや10年、そしてその価格差は広がるばかりです。現在ゴールドはプラチナの2.5倍以上の価格となっています。なぜプラチナとゴールドの価格差がこんなに開いたのでしょうか。まずはプラチナとゴールドの比較をしてみましょう。

(プラチナとゴールドの価格の歴史)

プラチナとゴールド、その比較

まず簡単にその歴史から見てみましょう。ゴールドと人間の付き合いは有史来5000年と言われています。少なくとも紀元前3000年には使われ始めたようで、古代エジプトのヒエログリフにはゴールドの記述があります。あのツタンカーメン王のゴールドのマスクは紀元前1300年代で今から3800年も昔になります。かくもゴールドと人類の付き合いは長いものです。それではプラチナは、と言えば本格的に発見されたのは250年前となります。かくも人類との付き合いという意味でプラチナとゴールドでは大きな差があります。

しかし希少性と言う意味では圧倒的にプラチナの方が貴重です。ゴールドの年間鉱山生産量は約3700トン。それに対してプラチナは約170トン、20分の1以下です。その上、ゴールドは世界中で満遍なく生産されており、その供給も安定しています。プラチナはその生産量のほぼ80%が南アとジンバブエに集中しており、そのために供給がほぼ南ア一国に依存していると言っていいでしょう。安定性という意味ではプラチナの供給は不安が大きいと言えるでしょう。それでは需用はどうでしょうか。プラチナの需用のほぼ70%が産業と自動車触媒であり、実際の産業資材として使われます。それらの分野ではプラチナは必須材料となっており、プラチナが無くてはならない分野です。

一方ゴールドの産業用需用は全体の7%に過ぎず、その大部分は宝飾品や投資用地金や金貨、ETF保管分のゴールド、そして中央銀行の保管分としてゴールドです。つまりゴールドは実用的な目的にはほとんど役に立たず、そのままの形で保有するのが主な需用なのです。そういう意味でゴールドはやはり特別であり、投資家用のメタルだと言えるでしょう。実用的にはゴールドが無くてもそれほどの不便はありませんが、プラチナがもし無くなると内燃機関の自動車はほぼ走ることができなくなります。

これら実際の需給の数字を並べると、プラチナの方がゴールドよりも圧倒的に高くなるはずと感じるはずです。少なくとも筆者はそう感じます。しかし冒頭に書いたように、2015年から価格が逆転し、今や10年が経ち、その差は広がる一方です。この逆転のきっかけになったのは、フォルクスワーゲンがプラチナ触媒を使うディーゼル車の触媒テスト結果不正を行ったことです。ディーゼル車の最大の市場である欧州において、ディーゼル車からガソリン車への動きが活発になり、プラチナ需要の40%を占める自動車触媒需用の先行きに暗雲が漂ったことです。しかしそこからなんとプラチナがゴールドの2.5分の1の価値になると想像した人はいなかったでしょう。ここまで下がった最大の理由は「投資家」です。ゴールドの需要は90%以上が宝飾品と投資です。プラチナのそれは35%に過ぎません。わかりやすく言うと中央銀行はゴールドを買いますが、プラチナは買いません。現在の貴金属の価格を決めているのは、需要家ではなく、投資家なのです。

今年のプラチナの動きとこれから

今年5月からプラチナも大きく上昇しました。そのきっかけになったのは、中国がプラチナ輸入を増やしているという報道でした。年初から9月末までの輸入量は現在で76.9トン。プラチナの年間生産が170トンです。この調子でいくと年間100トン、つまり全生産量の6割近くを中国が吸い込んでしまうことになります。

実際プラチナの金利であるリースレートは1ヶ月で20%を超えています。つまり現物が足りないということです。ちなみにゴールドのそれはほぼ0%です。このメタルのタイトな状況は、当然投資家の注目するところになりました。それでプラチナの上昇は年初から70%とゴールドの50%を大きく上回るものになっているのです。投資家がこの点にもっと注目するならば、プラチナの上昇の可能性はまだまだ大きいと言えるのではないでしょうか。特にゴールドとの比較においてのプラチナの割安さが、中国がプラチナの輸入を増やしている大きな理由になっています。プラチナの将来的な上昇ポテンシャルはゴールドに勝るとも劣らないと筆者は考えます。

(年初からのプラチナ価格の動き)
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