【池水雄一氏】現物投資の比較的優位性が強まる時代
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2026年02月10日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、貴金属スペシャリストの池水雄一氏にコラム「現物投資の比較的優位性が強まる時代」を執筆いただきました。

一般社団法人日本貴金属マーケット協会 代表理事、貴金属スペシャリスト 1962年生まれ兵庫県出身。1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社入社、その後1990年クレディ・スイス銀行、1992年より三井物産株式会社で貴金属チームリーダーを務める。2006年よりスタンダードバンク東京支店副支店長、2009年に同東京支店で支店長に就任。2019年9月より日本貴金属マーケット協会(JBMA)代表理事に就任。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界各国のブリオン(貴金属)ディーラーでブルース(池水氏のディーラー名)の名を知らない人はいない。
現物投資の比較的優位性が強まる時代
執筆日:2026/02/06
大荒れとなった貴金属市場のもたらしたもの
年初から貴金属市場は大荒れとなりました。特にその代表はシルバー。年初72ドルから始まり、月末にはなんと121ドルまで上昇、そしてその後なんと64ドルとほぼ半値まで暴落、この原稿を書いている2月6日現在、77ドル台とほぼ年初に近いレベルに戻していますが、ここ数日は一日の中で10ドルも動くという、過去40年間みたこともないような相場となっています。

現在、過去無かったくらいの投資家のインタレストが貴金属に入って来ているのです。この結果は価格の急騰急落という動きにもっともはっきりと表れていますが、それだけではありません。貴金属の「デリバティブ(派生商品)」とも言える現物以外の様々な投資商品にも大きな影響を与えています。まずは先物取引です。先物取引とは、取引所で定型化された未来の価格の取引ですが、たとえば大阪取引所の2026年12月限(12月ぎりと読みます)は、今年の12月末のゴールド価格を取引しています。先物取引とは将来の価格を取引するわけですが、もちろん、その将来時点での実際の価格を取引しているわけではありません。そんなことはまさに神様のみが知る世界であり、将来の予測など不可能です。では一体何をベースに取引しているのでしょう?我々にわかるのは現在の価格だけです。そのために先物取引のベースになるのはあくまで現在の価格であり、非常に単純化して言うと、現在の価格でゴールドを買って、それを将来の一定期日までに保有するコストを加味したものが先物価格として計算されるのです。
どのようなコストがかかるのか。例として1年のゴールドの先物価格を考えましょう。まず今(スポット)のゴールドが1オンス(31.1035グラム)5000ドルとすると、1オンスのゴールドを買うために5000ドル必要です。5000ドルを1年間調達(借りる)するためには、1年の金利を払う必要があります。そしてスポットで買ったゴールドは逆に1年間運用することができます。つまり金利を受け取ることができるわけです。現在1年のドル調達金利が3.8%、ゴールドの運用金利が0.37%です。とするとコストが3.8%、得られる利益が0.37%となり、これらを合わせて考えると3.8%-0.37%=3.5%となります。つまり、これから1年間5000ドルで買ったゴールドを保有し続けるコストはは$5000x3.5%=$175というコストがかかることとなり、$5000+$175=$5175というのが、1年先物の理論値となるのです。この理論値を逸脱すると瞬時に裁定取引が行われます。先物が理論値を超える価格で取引をされていれば、裁定取引を行うトレーダーがスポット買い先物売りをします。逆の場合も同じく、スポット売り先物買いが入って来ます。裁定取引トレーダーはこの取引により、ほぼノーリスクで利益を上げることができ、その結果、スポットと先物の関係は常に同価値になるようになっているのです。
現物の時代がやってくる
さて長々と先物価格の説明をしてきましたが、この稿の目的はそこではありません。先物取引を代表として、CFD(差金決済取引)、ETF(上場投資信託)といった貴金属を金融商品化した、広い意味での「派生商品」の価格が現物(スポット)の価格から大きく歪んでくる事象が頻繁に起こるようになったのです。上の解説で示したように、本来ならば裁定取引が機能して、たとえばゴールドであれば、現物、先物、CFD、ETFすべてが同一価値になることが基本です。ところが現在は、いろいろな市場に対する圧力などにより、同じゴールドであるはずの商品間で大きな価格の歪みがでてくるようになったのです。このようなデリバティブが現物価格よりも数パーセントから数十パーセントも高くなることが、珍しくなくなりました。これまでは売買スプレッドの広さを代表とした取引コストの高さから敬遠してきた投資家も多いであろう現物取引ですが、現状の売買スプレッドは1%くらいです。デリバティブが現物から簡単に数パーセント乖離するのであれば、このコストは返って割安ではないかと思います。究極の安全資産はやはり現物であるという認識も今後一層強まる時代になるのではないでしょうか。厳密な意味でのペーパーから現物へという流れが世界中で勢いをましてくることを予想します。

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