【松本英毅氏】セント・パトリックデーは、緑とビールの日
- #貴金属投資の基礎知識
2026年03月26日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、よそうかい代表 松本英毅氏にコラム「セント・パトリックデーは、緑とビールの日」を執筆いただきました。

会員制米国市場情報サイト「よそうかい.com 」を運営。ニューヨークを拠点に活動し、実際のトレードに役立つ情報提供を身上とする。金融から商品市場まで幅広い知識を有しており、一つの銘柄に捉われることなく総合的な判断を下すことができるのが強み。中でも、1バレル=10ドル時代から追い続けてきた原油市場については造詣が深い。トレード経験を活かした切り口の鋭い分析に定評がある。
セント・パトリックデーは、緑とビールの日
執筆日:2026/03/18
セント・パトリックデーは、緑とビールの日
ニューヨークの3月の風物詩と言えば、真っ先に思い浮かぶのが17日のセント・パトリック‘デーでしょう。アイルランドにキリスト教を広めた聖パトリックの命日であるこの日、アイルランド系の人々が中心となって5番街を44丁目から北に向かってパレードが行われます。アイルランドの民族衣装に身を包んだ人々が、バグパイプの演奏を背景に街を練り歩く姿は、なかなか見応えがあります。個人的には、この日は「緑とビールの日」ですね。アイルランドのカラーである鮮やかな緑色の服や帽子を身に着けて、ギネスをはじめとしたアイルランドのビールをガブガブと飲んで騒ぐという印象があまりにも強いためです。NY市警にもアイルランド系の移民は多く、たまに勤務の終わった警察官制服のまま飲んでいるのを見かけることがあります。NYに来た当初はちょっとびっくりしましたが、これもセント・パトリックデーのお祭りの一部なのです。
金相場の動きにもやや変化が見られるようになりました
さて、金相場に目をやってみると、3月に入ってからは以前のような積極的な上昇が見られなくなってきました。月初となる2日こそ、イスラエルと米国によるイランに対する大規模な攻撃を受けて大きく買いが集まりましたが、その後はイラン情勢が一段と緊迫、安全資産に対する需要が高まっている状況にも関わらず、どちらかといえば上値の重い展開が続いています。昨年1月のトランプ大統領就任以降、関税や外交など様々な政策を受けての混乱や先行き不透明感の高まりを背景に、安全資産としての需要が金相場を大きく押し上げてきたのは間違いのないところですが、イラン戦争の勃発という大きな問題に直面している現在、不思議なほどに買いが集まらなくなってきています。これは一体、どういうことなのでしょうか?
理由は意外に単純で、安全資産としての需要よりも、大きく買い進まれたものはいずれ売られる、急落した相場はどこかで上昇に転じるという、相場の論理が全体の動きを支配しているためだと思われます。トランプ関税に対して最高裁が違法との判断を示すなど、ただでさえ市場が混乱し先行き不透明感が高まっているところに今回のイラン戦争が起こったのですから、投資家の間に何とかしてリスクを回避しようとする動きが強まっているのは間違いありません。現在相場はいわゆる、「リスク・オフ」のステージにあるのです。こうした状況下では、投資家はリスクを引き下げようと、保有しているリスク資産の売却を進めます。これまではこうした動きが強まる中、金市場には他の市場から逃げ出した資金が逆に流入することにより、一段と値を切り上げる展開となっていたのですが、今回は流石にそうした動きは出てこなかったようです。それよりも金相場は他の何よりも大きく上昇し、利益も十分に乗っていただけに、売却の対象となった可能性が高いと思われます。金は確かに安全資産として認識されていますが、同時に株や原油などの商品市場と同様、一日の間に値が上下に大きく振れることもある立派なリスク資産だということなのでしょう。
安全資産としての金の価値が、なくなったわけではありません
だからと言って、安全資産としての金の価値が、全て失われた訳では決してありません。こうしたリスク回避の動きを背景としたポジション調整の動きは、値動きこそ激しくなるものの意外に長続きしないものでもあります。買われ過ぎ感の強い相場には売りが膨らみやすいですが、それによって値を切り下げれば割高感もなくなってしまいます。イランの新指導者に選出されたモジタバ・ハメネイ師は、父親よりも強硬派だとの見方もあります。彼の下でイランが徹底抗戦に打ってでれば、戦争も長期化の泥沼に入る恐れも高まるでしょう。石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の閉鎖が続くなら原油価格も一段と上昇、インフレの再燃につながることになるでしょう。こうしたシナリオは米国の金利を押し上げる可能性が高く、その点では金利を産まない金にとって弱気材料となるかもしれませんが、市場の不安が高まれば高まるほど、安全資産としての金に対する需要も高まります。足元の価格調整の動きが一巡すれば、改めて買い意欲が強まってくる可能性は高いと思われます。米景気の減速に対する懸念が株価を大きく押し下げ、米国市場からの資金逃避の動きが加速する中、為替市場で大きくドル安が進むことになれば、逃避資金は再び金に集まってくる可能性は高いのではないでしょうか。しばらく不安定な値動きが続くことは避けられないかもしれませんが、今は焦らず、じっくりと次のチャンスを待ちたいところです。
- 本コラムは貴金属に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・勧誘を目的としたものではありません。
- 本コラム掲載の文章は、全て執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。また、文章の著作権は執筆者に帰属しており、目的を問わず、無断複製・転載を禁じます。
- 本コラムの情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。実際の投資などにあたってはお客様ご自身の判断にて行ってください。
- 掲載内容に関するご質問には一切お答えできませんので、あらかじめご了承ください。


