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いしふくコラム

【志田富雄氏】米国との対立深める欧州、金相場にどう影響?

  • #貴金属投資の基礎知識

2026年05月11日

いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。

今回は、経済コラムニスト志田富雄氏にコラム「米国との対立深める欧州、金相場にどう影響?」を執筆いただきました。

米国との対立深める欧州、金相場にどう影響?

執筆日:2026/05/01

「避けられた不必要な戦争」

米トランプ政権と対立する国は中国やイランにとどまらず、欧州でも目立ちます。イランとの攻防が激化する場面では「有事のドル高」に触れましたが、米国とドルへの不信感は着実に強まっています。こうした変化も金などの貴金属相場を中長期に押し上げる要因になります。

昨年4月に突きつけた相互関税、デンマーク自治領であるグリーンランドの領有意欲――トランプ政権は次々と欧州の反発を買うような動きを見せてきました。米国とイスラエルがイランを攻撃したことも欧州各国の間では「避けることができた不必要な戦争だ」(ドイツのシュタインマイヤー大統領)との声が支配的です。スペインは国際法に違反する行為だとして米国が対イラン作戦で国内の基地を使うことを拒否しました。フランスのマクロン大統領は同盟国に相談なくイランへの攻撃を始めたと指摘。さらに「自分たちだけで決めた作戦が(欧州などの)支援を受けていないと、後になって不満を言っている」と批判しています。英国のスターマー首相も同じです。

米国と欧州は北大西洋条約機構(NATO)を軸にした同盟国であり、経済面でもかけがえのないパートナーであったはずです。米国はNATOからの脱退も示唆し、両者の間に深い亀裂が入ったのです。欧州各国は米国によるホルムズ海峡の「逆封鎖」も国際法に違反するとの立場で、同海峡の通航再開も「米国抜き」で対策をまとめようと動いています。

イタリアのメローニ首相は、トランプ氏がローマ教皇を非難したことをきっかけに「トランプ氏の教皇に対する発言は容認できない。教皇が平和を呼びかけ、戦争を非難するのは当然かつ正常なことだ」と批判し始めました。ローマ教皇庁(バチカン)との関係や国内に多いカトリック信者を考えれば当然でしょう。メローニ首相は昨年のトランプ大統領の就任式にも欧州の首脳として唯一主席し、トランプ氏も「偉大な指導者で私の友人」と呼ぶほど仲が親密だったのです。トランプ氏は欧州で唯一の友人も失ったのです。

仏中銀の巧みな準備金〝移動“

強引で威圧的なトランプ政権の手法は金融、貴金属市場にも波及します。今年1月にはデンマークの年金基金アカデミカーペンションが突然、1億ドル分の米国債を売却すると明らかにしました。この年金の判断はグリーンランド領有など政治的な動きを受けたものではなく、米国の財政悪化を懸念したものだとしています。ただ、トランプ氏は警戒感を強め、欧州諸国が対抗手段として米国債や株式を売却すれば「大規模な報復措置を講じる」と牽制しました。

最近の話題で言えば、フランス中央銀行による保有金の〝移動“が話題になりました。昨年4月2日のコラム「中央銀行」も悩む金の保管場所」で書いたドイツ連邦銀行のような単純な移動ではありません。ニューヨーク(おそらく連邦準備銀行でしょう)に保管してあった129トンの金はロンドン貴金属協会(LBMA)の基準に適合しない古い地金であったため、昨年から今年にかけて順次売却。欧州でLBMA基準の地金を買い直してきたのです。仏中銀は新たな地金も相場が下がった場面で買うなどの巧みさを見せ、25~26会計年度合わせて計128億ユーロ(約2兆4000億円)の特別差益を計上しました。

ビルロワドガロー仏中銀総裁は、政治的意図はないと強調します。それでも、なぜニューヨークでの保管をやめ、本国保管にしたの?という疑問は出てきます。KITCOニュースの担当記者、アーネスト・ホフマン氏は今回の取引について「米(トランプ)政権の外交的な反発を受けることもなく、大西洋を越える輸送や警備にかかる費用もかからず、莫大な利益で財務状況も改善される仏中銀にとって三方良しの結果になった」と指摘しています。

同行のホームページを見ると、総量で2400トンを超すフランスの準備金は主に地下27メートルに位置する「スーテレーヌ(Souterraine=地下室)」と呼ばれる超厳重な金庫室に保管されており、この金庫室は1940年に国際地下建築賞を受賞した、との記述があります。

フランス銀行(中央銀行)はニューヨークにあった古い地金の金を売却(同行ホームページから、売却とは無関係な写真)

薄れる「米国への遠慮、忖度」

昨年6月には英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が「ドイツとイタリアが迫られる保有金移動、総額2450ドルの金を米国から本国へ」という記事を伝えました。同紙によれば、納税者の立場から財政を監視する市民団体、欧州納税者協会(TAE)はドイツとイタリアの財務省、中央銀行に書簡を送り、金の保管機関として米連邦準備理事会(FRB)に依存する体制を見直すことを両国の政策立案者に求めたのです。TAEのミハエル・イェーガー会長はFT紙の取材に対し、「我々はトランプ氏がFRBの独立性に干渉することを非常に懸念している。我々の提言は(ドイツとイタリアの)金準備を本国へ戻すことだ」と語っています。

欧州各国と米国の対立が深まるほど、準備金の移動などの判断にも「米国政府への遠慮、忖度」はなくなります。一言、「政治的な意図はない」という決まり文句を付け加えておけば万全でしょう。

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