【松本英毅氏】5月最終月曜のメモリアルデーが過ぎると、いよいよドライブ・シーズン到来です
- #貴金属投資の基礎知識
2026年05月27日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、よそうかい代表 松本英毅氏にコラム「5月最終月曜のメモリアルデーが過ぎると、いよいよドライブ・シーズン到来です」を執筆いただきました。

会員制米国市場情報サイト「よそうかい.com 」を運営。ニューヨークを拠点に活動し、実際のトレードに役立つ情報提供を身上とする。金融から商品市場まで幅広い知識を有しており、一つの銘柄に捉われることなく総合的な判断を下すことができるのが強み。中でも、1バレル=10ドル時代から追い続けてきた原油市場については造詣が深い。トレード経験を活かした切り口の鋭い分析に定評がある。
5月最終月曜のメモリアルデーが過ぎると、いよいよドライブ・シーズン到来です
執筆日:2026/05/20
5月の第一土曜には、全米の競馬ファンが熱狂します
5月のニューヨーク、というか全米の関心事といえば、真っ先に挙げられるのがケンタッキー州ルイビルで開かれるケンタッキーダービーでしょう。毎年5月の第一土曜日に開催され、競馬ファンが熱狂するこの一大イベントは、それまで東海岸、南部、中西部、西海岸と、それぞれの地域で活躍していた3歳馬が一堂に会するレースでもあり、それだけに予想も難しいとされています。今年は9番人気、単勝オッズが23倍という穴馬、ゴールデン・テンポが見事勝利を飾りました。調教師のシェリー・デュボーは女性として初めて、そしてジョッキーのホセ・オルティスもダービー初勝利、2着に入った兄、アイラッド・オルティスと兄弟でワン・ツーフィニッシュを飾り話題をさらいました。当日はたまたまローワーマンハッタンのサウスストリート・シーポートを散歩していたのですが、通りにあるビアガーデンの前にはダービーの象徴である赤いバラの花で飾られた大きな蹄鉄のオブジェが置かれ、中では皆が中継を見ながらビールを楽しんでいました。
もう一つ、5月と言えば忘れてはならないのが、最終月曜日に設定されているメモリアルデーの祝日でしょう。特に明確な決まりがあるのではないのですが、この日からアメリカでは夏のバケーション・シーズンに入ります。そして7月4日の独立記念日をピークに、9月の第一月曜のレイバーデーの祝日まで続くわけです。夏のバケーションといえば、それはすなわちドライブ・シーズンを意味します。普段車に乗らないニューヨーカーでもドライブでの旅行を計画したりするのですが、今年は少し様子が違います。イラン戦争に端を発した原油価格急騰の影響で、ガソリン価格が大きく上昇しているからです。今の状況を見る限り、ガソリン価格がすぐに下がるとは思いません。夏の間にドライブを存分に楽しむことが出来なかった米国市民は、果たして11月の中間選挙でどのような判断を下すのでしょう?
仮にホルムズ海峡の閉鎖が解除されたとしても、エネルギー価格は簡単に下がりません
5月の金相場は、相変わらず市場全体がイラン情勢に一喜一憂する状況下、投機的な売り買いに振り回される不安定な展開が続きました。そうした中でも後半は、やや上値が重くなる場面が多く見られるようになったと見てよいでしょう。背景にあるのはインフレ圧力の高まりと、それに伴う米長期金利の上昇です。2月末に米国が突然イランに対する攻撃を開始、それを受けてイランが石油供給の要衝であるホルムズ海峡の閉鎖に踏み切って以降、そろそろ3ヶ月が経とうとしています。ホルムズ海峡の奥にあるペルシャ湾の産油国からの石油供給は、イランからの分を除いてほぼ停止した状況が続いていますし、そのイランからの輸出も米国も海峡の封鎖に踏み切ったことによって、停止してしまっているというのが現状です。
ペルシャ湾からアジアを中心とした消費国までのタンカーによる輸送には4週間ほどを要しますから、3月末までは海峡閉鎖以前にペルシャ湾を出たものが到着していましたから何の問題もありませんでした。問題はその後で、4月以降はホルムズ海峡閉鎖の影響が、徐々に表れるようになってきています。それでも国際エネルギー機関(IEA)の加盟国による大量の戦略備蓄の放出や、比較的余力のあった米国産原油の緊急買い付けによってなんとか急場を凌いできたのですが、それにも限界があります。またホルムズ海峡経由の供給に頼っていない米国でも、輸出の増加を受けて国内需給が急速に引き締まってきています。消費国の在庫は、この先全世界的に一段と取り崩しが進むことになり、原油をはじめとしたエネルギー価格を押し上げ続けることになるでしょう。秋の中間選挙を控えてガソリン価格をなんとしてでも押し下げたいトランプ大統領が、大胆な譲歩を行ってイランとの交渉をまとめることも考えられますが、仮に海峡の閉鎖が解除されたとしても、供給がすぐに戻ってくるわけではありません。輸出ができなくなったことで閉鎖された油田の再開や、タンカーの再配船などにかなりの時間を要することを考えれば、原油価格が簡単に下がることはないと見ておいたほうがよいと思われます。
インフレ再燃を背景とした米長期金利の上昇は、金にとって大きな重石
原油がこの先も高止まりを続けるのなら、当然のようにそれは物価上昇圧力を強めることになります。インフレ指標となる4月の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)は、予想を大きく上回る高い伸びとなりましたし、5月には更に伸びが拡大すると見られています。気を付けなければならないのは、エネルギー価格だけではなく、サービスなどの価格も上昇基調が強まってきているという点です。今のところ物価の上昇はエネルギー価格が中心で、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は比較的落ち着いてはいますが、これが5月の統計分以降に伸びが加速するようなら、米国の中央銀行であるFRBも政策金利の引き上げを検討せざるを得なくなるでしょう。4月に行われた米連邦市場委員会(FOMC)の議事録では、半数を超える参加者が今後の状況次第では利上げが妥当となる可能性があるとの認識を示していることが明らかになりました。6月に開かれるFOMCは、新議長に就任したウォーシュ氏の下で開かれる初めての会合となります。将来的に利下げを進める意向を強く示すことで、トランプ大統領の指名を勝ち取って新議長ですが、今の状況が続くなら最初の決定は利上げになることも十分にあり得るでしょう。
インフレが進行しFRBが金融引き締めに転じるなら、それに伴って米国の長期金利も一段と上昇基調を強めることになるでしょう。米30年物の米国債の利回りは既に5%の大台を超え、19年ぶりの高水準となっています。このまま上昇を続けるなら、市場の注目度の高い10年物の米国債の利回りも、5%を超えてくることになるでしょう。19年ぶりの高水準ということはすなわち、リーマンショックが起こる直前の金利だということです。当時と今とでは経済環境も大きく異なりますから、必ずしもリーマンショックのような株価急落が起こるとは限りませんが、少なくともその時には金価格も大きく値を崩したことは頭の片隅に残しておくべきではないでしょうか。
ただしそうした株価の急落が起こることによって米経済が急速に悪化、景気後退に陥るようなことがあるなら、その時にはインフレ圧力も後退し金利も再び低下に向かうことになります。恐らくはドル安も一気に進行することになり、金市場にとっては絶好の買い場が到来する可能性が高いと思います。リーマンショック以降に市場が落ち着きを取り戻した後には、金相場がほかのどの市場よりも早く回復基調に戻ったことも、合わせて覚えておきたいところです。
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