【志田富雄氏】納豆が教える資産防衛の大切さ
- #貴金属投資の基礎知識
2026年06月03日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、経済コラムニスト志田富雄氏にコラム「納豆が教える資産防衛の大切さ」を執筆いただきました。

1983年に日本経済新聞社に入社し、証券部に配属。85年にロンドン支局(後の欧州編集総局)に赴任し、原油や金、非鉄金属市場を初めて取材。「すず危機」や北海ブレント原油が10ドルを下回る急落場面に遭遇した。それ以来、コモディティー市場の取材歴は30年以上になる。2003年から24年末の退社まで編集委員。09年~19年は論説委員を兼務した。コメなどの国内食品市場や水産資源問題にも詳しい。日経電子版「Think!」投稿エキスパート。日本メタル経済研究所特任アナリスト。
納豆が教える資産防衛の大切さ
執筆日:2026/05/30
容器やフィルムの値上がりが直撃
ホルムズ海峡が事実上閉鎖された事態は、ガソリンや軽油、プラスチック製品の値上がりだけでなく、私たちが毎日食べる身近な食料品にまで波及しています。ウクライナ危機による物価高が落ち着いてきたと思ったら、またもや値上げの嵐。収束しないインフレは、金などの貴金属や株式を資産として持つことの意味を日本人に教えてくれます。
納豆は日本の食卓に欠かせない食品の一つでしょう。値段も手頃で、スーパーでは安売りの目玉商品になることもしばしばありました。そんな庶民の味方であったはずの納豆がどんどん値上がりしています。大手のタカノフーズは5月15日、「おかめ納豆」などの納豆、豆腐、厚揚げの全商品を15%値上げすると発表しました。今月1日以降、小売店に到着する商品から適用されます。

調味料大手のミツカンも納豆全19商品を今月から6~20%値上げすることを発表しています。これまで納豆は主に原料になる大豆価格が上がった時に値上げする企業が目立ちました。今回は両社とも容器やフィルムなどが石化原料ナフサの価格高騰で大幅に値上がりした影響が大きいのです。
中身を減らす「ステルス値上げ」にも限界があります。皆さんは納豆を買う時に中身がどれくらいの量か、チェックしたことがありますか。通常商品で1パック60グラム以上のものから50グラム、45グラム、40グラムと色々あります。ただ、傾向として40グラム入りが増えているのです。以前、取材した納豆メーカーの社長は「40グラムよりも減らすと、消費者が少ない!と感じてしまう」と話していました。
1000万円が20年後に550万円ほどの価値に目減り
企業の信用調査で有名な帝国データバンクは毎月、主要195社の食品メーカーを対象に価格改定を調べて公表しています。ウクライナ危機で原油や天然ガス、穀物、食用油などの価格が高騰した影響で23年には3万2000品目以上の値上げがありました。その後、値上げの品目数は減少傾向にあったのですが、5月29日に発表した最新の調査では「中東情勢の悪化を背景に、今夏以降に広範囲な値上げラッシュが続く」とみています。
値上がり品目が減る局面はあっても、一旦引き上げた食品の価格を企業が下げることはなかなかありません。世界経済が新型コロナウイルス禍から回復してきた頃から、国際情勢の緊迫や異常気象、国内では人手不足と物流コストの上昇も加わって食品値上げが頻繁に起きるようになりました。帝国データバンクは6月中にも値上げ品目が5年連続で1万を超す見通しだといいます。

私たちが毎日食べる食料品で止まらない値上がり。裏返せばそれだけお金(円)の価値が目減りしているのです。資産運用についての考え方は人それぞれでしょう。ただ、現金のままでは食品などの物価上昇で資産価値が減る可能性が高い時代に入ったのです。仮に平均年2%の物価上昇が20年続くと、現在の1000万円は670万円ほどの価値に減少し、平均3%だと550万円ほどに減ってしまいます。銀行の預金金利も上がってきたとはいえ、メガバンクの大口定期預金(1000万円以上、3年)でも0.6%と足元の物価上昇率に及びません。
補助金を維持すれば財政不安
日本政府は3月19日からガソリンなどの価格があまり高くならないように石油元売り各社に補助金を出しています。ガソリン価格が1リットル170円ほどに抑えられているのは、補助金のおかげです。補助金がないと200円以上になってしまいます。ただ、補助のための予算は今月中にも枯渇してしまう可能性があります。
政府は引き上げが予想される夏場の電力・ガス料金も補助する方針で、高市早苗首相は補正予算の編成を含め、資金面の手当てを検討するよう財務省などに指示しました。しかし、こうした動きは市場で「日本の財政は大丈夫なの?」という疑問につながり、円相場や国債相場の下落圧力になります。
今回の危機はエネルギーや原材料の多くを海外からの調達に依存する日本の姿を改めて浮き彫りにしました。補助金をなくせば家計が苦しくなりますが、日本の財政事情を考えれば長期にわたって継続できるものではありません。納豆という身近な商品の値上がりにも、日本が直面するさまざまな問題が絡んでいます。そして大切な資産の価値をどう守るかという問題も、私たち日本人にとって重要性が増しているのです。
- 本コラムは貴金属に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・勧誘を目的としたものではありません。
- 本コラム掲載の文章は、全て執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。また、文章の著作権は執筆者に帰属しており、目的を問わず、無断複製・転載を禁じます。
- 本コラムの情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。実際の投資などにあたってはお客様ご自身の判断にて行ってください。
- 掲載内容に関するご質問には一切お答えできませんので、あらかじめご了承ください。



