【志田富雄氏】金を買い増す気満々の中央銀行
- #貴金属投資の基礎知識
2026年07月01日
いしふくコラムでは、読者の皆様への情報提供の一つとして、2025年より貴金属に関する四方山話や相場解説などを専門家に執筆いただきます。 専門家の深い知見に触れ、貴金属への興味・関心を持っていただければ幸いです。
今回は、経済コラムニスト志田富雄氏にコラム「金を買い増す気満々の中央銀行」を執筆いただきました。

1983年に日本経済新聞社に入社し、証券部に配属。85年にロンドン支局(後の欧州編集総局)に赴任し、原油や金、非鉄金属市場を初めて取材。「すず危機」や北海ブレント原油が10ドルを下回る急落場面に遭遇した。それ以来、コモディティー市場の取材歴は30年以上になる。2003年から24年末の退社まで編集委員。09年~19年は論説委員を兼務した。コメなどの国内食品市場や水産資源問題にも詳しい。日経電子版「Think!」投稿エキスパート。日本メタル経済研究所特任アナリスト。
金を買い増す気満々の中央銀行
執筆日:2026/06/29
合わせて4カ国語でアンケート調査
金相場は調整局面が続き、米国の先物相場は6月下旬に一時7カ月ぶりに1トロイオンス4000ドルを下回る場面もありました。それでも、世界の中央銀行を対象にしたワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のアンケート調査を見ると、足元の相場動向とは別な風景が見えてきます。
WGCによる中央銀行へのアンケート調査「Central Bank Gold Reserves(CBGR)survey」は今年で9年目になります。初めてこの調査を見たときは、中央銀行がここまで答えてくれるのか、と驚いた記憶があります。今年の調査は2月5日から5月19日にかけて実施され、79件(昨年は73件)の有効回答(有効回答率は51%)を得たといいます。アンケートはまず英語で作られ、より多くの中央銀行が答えやすいようにアラビア語、フランス語、スペイン語に翻訳されています。
83%が「世界の金準備は増え続ける」
6月に公表された今回の回答からは、世界の中央銀行の間で、金準備の増強が続くトレンドが定着している様子が明確に見えます。「外貨準備に占める金の割合は5年後にどうなると予想するか」という質問に対し、「やや高まる(moderately higher)」「かなり高まる(significantly higher)」を合わせた回答は83%に及びました。まだまだ準備資産の中で金の比率は高まると見ているのです。対照的にドル建て資産については「やや減る(moderately lower)」「かなり減る(significantly lower)」が合わせて74%になりました。特筆すべきなのは、下のグラフで分かるように過去5年間の推移で「ドル資産から金へ」という傾向は強まっているのです。

金融環境・国際情勢の変化が後押し
中央銀行(公的機関)による金準備の積み増し量は昨年、4年ぶりに1000トンを下回りました。それでも850トンを積み増したのです。今年1~3月は243.7トンと再び年1000トンペースに近づきつつあります。調査は貴機関(あなたの中央銀行)が今後12カ月間で金準備をどのように変化させるか、との予想も聞いています。今年の調査では45%が「増やす」と回答しました。ちなみに、現状維持が54%、減らすが1%でした。下のグラフのように、自身も「増やす」との回答も年を追うごとに高まっており、19年の8%から見ると驚異的な伸びです。

何が中央銀行を金に向かわせているのか。意思決定に関わる要因として多かった(複数回答)のは「金利水準」(92%)や「地政学リスク(不安定性)」(88%)であり、「インフレ懸念」(79%)がその次にきます。金という現物資産を持つ動機は中央銀行も一般の投資家も同じなのです。WGCの調査はさらに回答を先進国の中央銀行と新興国の中央銀行に分類した結果も公表しています。それを見ると、どの要因も先進国より新興国の中央銀行の方が高い比率になっています。地政学リスクを挙げた中央銀行は先進国が67%であるのに対し、新興国では95%に達します。インフレ懸念も新興国では84%(先進国は61%)です。新興国ほど強い危機感を持って金を積み増していることが分かります。
今年の調査は質問の数が全部で37と昨年調査の32から増加。19年調査の17に比べると2倍以上に増えました。それでも有効回答が増えているのは各国の中央銀行が金への関心を高め、どんな結果が出てくるのかに興味を持っているからだと思います。私が最近楽しみにしている回答結果に「金準備の保管場所(実際の保管場所全てを回答)」があります。大切な財産を預けるのですから、その国の信頼度を示していると思います。英国の中央銀行であるバンク・オブ・イングランドが57%(昨年は64%)と安定の第1位。自国保管の比率も49%と昨年(59%)から下がったとはいえ、高い水準を維持しています。昨年からの比率変化には有効回答が増えたことや、回答保留の比率が20%(昨年は8%)に高まったことも影響しています。それを踏まえた上でも、ニューヨーク連邦準備銀行での保管は昨年の17%から14%に低下しました。
- 本コラムは貴金属に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・勧誘を目的としたものではありません。
- 本コラム掲載の文章は、全て執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。また、文章の著作権は執筆者に帰属しており、目的を問わず、無断複製・転載を禁じます。
- 本コラムの情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。実際の投資などにあたってはお客様ご自身の判断にて行ってください。
- 掲載内容に関するご質問には一切お答えできませんので、あらかじめご了承ください。



